その２　彩色された人々

2001．10．23

　ニューオリンズと一口にいってもとても広いのだけれども、いわゆる観光客が訪れるのは「フレンチ･クォーター」というある程度限られた地域。ジャクソン広場という小さな公園（初めての南部出身の大統領「アンドリュー・ジャクソン」の像が建立されている）を中心に、アメリカで一番古い大聖堂や、ほかにもフランス統治下時代の建物がそのまま残されているところです。　そういったわけでこのジャクソン広場周辺は、朝から晩までひっきりなしに観光客が右往左往してるのですが、その観光客を目当てにした様々なパフォーマンスが繰り広げられていることでも有名です。世界各国から集まってきた絵描き、ストリートミュージシャン（ミュージシャンはあちこちで演奏してるけどね）、大道芸人がこの一画で技を競い合ってるといっても過言じゃないでしょう。買い物したり、名所を見たりしなくても、この広場周辺を一日中ぶらぶらしてるだけで充分楽しめます。

　絵描きさんは、広場のまわりを十数名が陣取ってます。観光客の似顔絵を描いている人や、今回はタトゥー（もちろん偽）を描いてくれる人もいました。面白いのが、描いている似顔絵を見てると、どの国のお客さんを描いても、なんとなくその絵描きさん自身の人種っぽい顔になっちゃうのね。スパニッシュ系の人が描く絵は、なんとなくみんなスパニッシュ系、東洋系の人が描く絵は、なんとなく東洋系・・というように。不思議なもんです。

　さて大道芸人さんたちですが、こちらも様々。タップダンス少年、鎖脱出おじさん、ジャグリングおじさん、グラスハープおじいちゃん・・・、とやってることも多種多様。芸人さんが何かを始めると、すぐに人だかりの輪ができてみんな石畳にそのまま座り込んで見学します。これがけっこう楽しいのだ。
　大道芸人さんの中で一番多いのが、「石像に変身」するパフォーマンス。ま、パントマイムの基本ですからね。顔や身体を銀色や金色、緑色に塗って、固まった状態で立っている。で通りかかった観光客を時々「わっ！」と驚かすというもの。この手の人たちはほんとにピンきりで、「すごい！」と思わせる人から、「うーん・・・。」な人まで色々でした。ベストオブ石像パフォーマーは金銀に身体を彩色したご夫婦（たぶん）。石のように固まってて通りがかりの人を驚かす手法はそのままなのですが、なにせ息が合っている。驚かされた後に一緒に写真を取ってもらっったんだけど、撮影後に「サァァンクユゥ！」とこれまた息ぴったりのお辞儀で挨拶してくれる徹底ぶり。「芸人はこうあるべし！」というお二人でした。

　芸人さんたち全体に感じたのが、何しろ「客いじり」がうまい。上手に周りの野次馬を参加させて、場を盛り上げてくのね。ジャグリングおじさんは、最初は当然自分ひとりでジャグリング用のピンやいろんなものを投げ上げてくのだけど、次には見ている子供を前に出して、一緒に手を取りながらジャグリングさせる。次には、お父さんを地面に寝かせ、その上でボーリングのボールやナイフをジャグリングする、など何しろ客を参加させるのです。「事故防止ね」という意味のことを言いながら、お父さんの股間にシルクハットを置いておいて（ちょっとお下品だけどね）、いざ始める時に「お子さんは何人？」「２人」「じゃあ、もういらないでしょ」と、かぶせたシルクハットをとっちゃって、そこで笑いをとる・・・。英語がわからない私は、西弟に解説してもらって納得。ことばがわからないのってやっぱり損します。もう少し英会話しておこうって旅行のあとはいつも思うのよね。